私の小さな願い事
慶応 元年 春

桜のにおい

~土方歳三~


今年も綺麗な桜が満開になった


新選組から脱走して、山南さんが切腹

屯所を西本願寺に移転した


桜を見上げ、何とも切ない気持ち…


こんな形で、試衛館の仲間を失うことなんて、想像してなかった


それに……


優がいくら探っても、依里の情報は

何も掴めなかった


あまりにも情報が少なすぎて

安否確認すら出来ない

一ツ橋様が心配の文を家茂様に出したことがきっかけで


家茂様が、来月上洛するらしい



願わくば、優を依里の女中に復活させて欲しいものだ













翌月




将軍 家茂公が上洛した

しかし


「依里様……家茂様の御見舞いを
……お断りしたそうです」

優が、小刻みに震え

泣きながら言った


そっと、優を抱きしめる


家茂様について行き、依里に会う予定だったのに、希望が打ち砕かれたらしい


「土方~ 依里様に会いたいよぉ~」


泣きじゃくる

優を撫でた


あの日と同じ優だった


「依里様がそばにいないと寝られない
依里様に早く、思い出してもらいたい」


たった一晩依里をとられて

こんなにも落ち込む

優を

一途に依里を大切に慕う

優に、惚れた



優の為に

優が喜ぶことをしてやりたい


「一度で挫けんな!何度か当たってみろ!」


「うん…家茂様にお願いしてみる」





結局会えず仕舞で

励ましてやることしか出来なかった










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