私の小さな願い事
慶喜様がいらした


「慶喜様、これから、依里様と寝食共にさせていただきます
おひとりになると、何か思い出すようで」


「すまんな……俺が、もっと早くに気づいていたら…… 依里を頼む」



慶喜様から見ても、この震えようは
痛々しいようだ


「依里、もう、大丈夫だ
俺も毎日会いに来る!!」


「……ごめんなさい」



慶喜様と顔を見合わせた


思っているより、もしかしたら重症かも


一度震えると、なかなか治まらない

ボソボソとごめんなさいを繰り返す


こうなってしまうと、会話すら出来ないし

私のことも、慶喜様のことも

認識出来ず


触られることを嫌がる


「どんな酷いことをされたのかしら…
悔しい……依里様のそばを離れたばかりに」


「優、今日は仕事がないのだ
俺が依里についておる
東宮様に報告してこい」


「はい!あっ!新選組にもよろしいですか?
依里様の剣術の師匠がいるので」


「そうか、構わん行ってこい」







東宮様に報告し、土方に会う

「どうした……依里に会えなかったのか」

土方の顔を見たら、涙がポロポロ落ちる

「会えた」

「そんなに体調悪ぃのか?」

「うん……しばらく、お世話する
依里様… 可哀想で……」


お子のこと、今の状態を話した


「ひでぇな……優!!依里を頼むな!!」

そう言って、土方は私を抱きしめた

「きっと、元に戻して見せます!!」


「あ!!これ!!
依里のだから、渡してやってくれ!」


桜の刺繍が入ったにおい袋


「土方がもっててくれたの?」

「依里、そのにおい袋であの時も
回復しただろ?」

「うん!!ありがとう!!
きっと、大喜びするわ!!」


土方の部屋を出ようと襖を開けると

ゴロゴロと幹部らが、転がる

「盗み聞きですか!?」

永「依里は、俺の妹みたいなもんだ」

原「いや、俺のだ」

藤「はぁ?俺のだし!!」

斎「俺のだ」

沖「もぉ……皆さん、勝手なんだから!
依里は、僕のですよ!!」

近「俺の妹だろ!!」


土方と私は、苦笑いした


「依里様に報告します!
新選組の兄達が、心配してたって!」


沖「これ……食べれるかな?」

「わっ!金平糖!!喜びますよ!
ありがとうございます!!
皆さん!!ありがとうございます!!」


二条城に戻り、依里様の部屋へ


「依里様!!」

慶喜様の腕の中で、眠っていたのに
私ったら、大声出して、依里様を起こしてしまった

「うぅ~ん、優…おかえり」

「依里様!!土方がこれ!!忘れ物を大事に持っててくれたんです!
それから、幹部たちがね、依里様は自分の妹だって言い合ってね!
近藤さんまで、俺のだ!!って!!
そうそう!!沖田さんが、依里様に!!」

「金平糖だ!!甘いの久しぶり~」

依里様の表情が明るくなった

慶喜様が依里様を撫でる

「ねぇ?優、私……歳三が好きだったの」


「「え?」」


見事に慶喜様と揃った

「優、歳三と恋仲にならなかったの?」

「私、知らなくて……恋仲です」

「そう!!よかった!!
だったら、土方なんて呼び方辞めて!
歳三はね、下の名前で呼ばれると
嬉しいらしいよ!
家族って気がするんだって!!
私は、歳三の弟だから!!」


「依里~ 土方歳三が好きだったのか!?」

「そうだよ 嫁入り前ね
この部屋でひとりでいるとき
会いたかったのは、慶喜様だよ」


さらりと言うものだから

慶喜様は、真っ赤


「仲のよろしいこと」


お似合いの夫婦だわ

素敵




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