私の小さな願い事
慶応 元年 冬

内緒

~土方歳三~


優が自由に依里と会えるようになった

依里がよく笑うようになったと喜ぶ


「お前の世話がいんだろ?」

「依里様の努力の賜です!!
依里様に早く、お子が出来ないかなぁ~」

「急かすことじゃねぇだろ!!」

「どうして?お子が出来たら、私をお世話役にしてくれるのよ!そしたら、毎日一緒にいられるじゃない!!」


こいつ……

絶対、俺より依里のが好きだな……


「あ~歳三が、依里様の話聞いてくるから
会いたくなっちゃったぁ~」

「会いに行けば良いだろ」

「さっき行ったばかりだもの……」

「そうかよ……」


よく笑うってのは、さっきの話か


依里のおかげで、優が俺を名前で呼ぶようになった

さん くらいつけて欲しいが

まぁ 気にしないでやろう




会う度に〝依里 依里〟と

俺達は、依里の話しかしてねぇな




「なぁ?お前、生まれは?」

「……」



聞いてはならなかったのだろうか





「……俺は、多摩の方だ石田村」

「……私は、大奥」


隠すことか?


「そっか!   ……ん?」

「やっぱり、歳三は気づくわね
依里様が生まれた時、私は四つ
父と母が、依里様を育てた
御庭番衆だったの
私は、女中達に育てられたの
将来、依里様の女中として、お世話する為に……
可愛い赤子だったわ
私…妹ができたようで、嬉しかったの
暇さえあれば、依里様のところに行ったわ
依里様の為だから、さみしくても
辛くても、頑張った
私が十の時、私の父母が殺害された
その場に依里様は、おらずどこか安全な場所に連れて行かれた…とだけ
たくさん泣いたわ
家族を三人いっぺんに失った気持ちで
私は、ひとりぼっちなんだと
私の心の支えは、依里様を迎えに行くこと
そして、ずっとそばにいることだった
再会した時、依里様は、父母のことは覚えていたけど、私のことは、忘れていた
依里様にこの話、してないの」


「優は、仇打ちを考えなかったんだな」

「産みの親より、育ての親ね
依里様が、あんなに憎しみをあらわにしてたのに、私は…なんだか自分の親と結びつかなくてね」

「そっか……妹か」

「うん……たったひとりの家族なの」














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