私の小さな願い事
~依里~



なんと!!

私宛に、慶喜様の御正室様から、文が

内容は


多津のことだった



慶喜様との間に生まれた

女の子が夭折した時のこと

多津がお産に立ち合い、ずっと世話をした

ある日、突然亡くなり


とても自分を責めたそうだ


御正室様は、体が弱く

もう、産めない体


多津が私の世話役になったとき


御正室様にお子を返したい

そんな希望を持っていたのだろう


私を閉じ込めたのは、山猿と聞いて

お子を流すくらい

暴れると思ったからなそうだ


今、多津は、私にも慶喜様にも

申し訳ないことをしたと

苦しんでいる

許して欲しいと





慶太郎は、とても元気だそうだ

泣き声は大きく

いつもバタバタして、おしめも着替えも

大変なんだって




私も御正室様に文を書いた




多津のことは、恨んでいない

無事にお子を江戸まで旅させてくれた

医者は、もたないと言っていたけど

多津の腕がよかったんだから

感謝している

御正室様に慶太郎をよろしくお願いして

文を出した



ひとつきもせず、お返事がきた


そこには、小さな手形

慶太郎の手……


そして、兄 家茂が、慶太郎に会いに来たそうだ


ずっ……ずるい!!!


慶喜様より先に、抱っこするなんて!!!


だけどね…



嬉しくて、涙がでる



「依里!!どうした!!」

「うふふっ 内緒です」


「何か辛いことがあったのなら、言ってくれ!!」

「良いことです!!嬉しくて!!えへへっ」



慶喜様は、意外にヤキモチだから

慶喜様が慶太郎を抱く日が来るまで

内緒にしとこう


兄が恨まれそうだから







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