私の小さな願い事
多津は、その側室様のお世話もすることに

「あちらは、初めてで不安でしょう
今日は、体調もいいから
私は、大丈夫よ
行ったり来たり貴方も大変でしょう
私のことは、気にしないでね」


〝ゆうげにはきます〟



多津が部屋を出てから、ため息をひとつ




多津に体調が良いと言ったのは、本当

だって、薄らだけど少し見えるから


誰にも見られないように

部屋を締め切り、文机にむかう


いそいそと墨をする


目が見えるうちに、しなければいけないことがあった


筆を走らせ、文を書いた


東宮様 慶喜様 御正室様 多津 


歳三には、書こうとして辞めた


頼っちゃいけない気がしたから

歳三は、優のだから




道具を片付け、乾いた文を畳んでいく




よし!!




文を隠して、これでよし!!




締め切っていた襖を開けた


暑い~


廊下に腰掛け、ギラギラの太陽を見上げ

眩しいなぁと目の見える喜びに

ひとり、にこにこする


風に髪が揺れる


伸びたなぁ


慶太郎が死んだと思い込んで、死のうとした時、母として強くあろうと

弱い自分を切り離す意味で

切った髪



よし!!




散らからないように髪の下の方を結い紐でくくり

小刀でバサリ


切った髪を屑籠に捨てた



これで、大丈夫!!!








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