恋の相手は強引上司
「ところで・・・自己紹介まだだったよね。
君は・・・レミちゃんだったね。ママさんや他のお客さんがそう呼んでたから
・・・俺の名前は・・・カズマ」

「カズマ?」

「数字の一に馬で一馬。俺の母親、競走馬が好きだったんだよ。もちろん純粋に馬がすきってやつ。
細い足でタテガミを靡かせて颯爽と走る姿が好きだったんだって。
それで生まれてきた俺に、自分がこれだと決めた事に自信を持って突き進んでその道の一番になってほしいって
願いを込めてつけたんだって」

男性と話すなんてのは「あおい」の常連客のおっちゃんくらいだけど・・・

いきなり名前の由来を話す男なんて初めてだ。

「へ~~」

これがうちの後輩女子社員なら目をキラキラさせて

素敵~~~って言うのだろうが

男の免疫がなければ、人より素直じゃない(自覚はある)し少々弄れている私は

『へ~~』としか返しようがなかった。第一興味すらないし・・・

だけど一馬という人は私のリアクションなど屁とも思っていないのかそれとも

想定内の返答だったのか表情一つ変えなかった。

「じゃあ~レミちゃんは?どんな漢字書くの?っていうかもしかしてカタカナとか・・・
ひらがな?」

ちょ・・・ちょっといきなりその質問?!

よりによって私が一番嫌な質問するって・・・わざと?

顔が徐々に強張る。

こんなかっこいい人に正直に答えたら絶対、口に手を当てて吹き出すに違いない。

そんなの絶対嫌!

ママや常連さんの前で恥なんかかきたくない!

「どうだっていいじゃない。あんたに関係ないし」

「一馬」

「え?!」

「あんたじゃないよ。一馬って言ったよね。ちゃんと名まえで読んでよ。そのための自己紹介でしょ」

急にまともな事を言われて言い返せなかった。

「・・・・・・・」

私が拗ねた子供のように口を尖らせていると・・・
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