恋の相手は強引上司
胸の奥がジーンとして思わずネクタイを握りしめていた。

「お~~い。いつまでえらんー」

一馬は私の握っているネクタイを見て目を細めた。

「そう~これこれ・・・・このネクタイを見る度に、なにがなんでも
もう一度恋実に会うんだって躍起になっててさ・・・・なにか大きな商談が
あったりするとこのネクタイをしていたんだ」

そういうと私の手からそのネクタイを軽く引っ張った。

「え?」

「今日はこれにする」

「う・・・うん」

「俺、もう10分したら行くよ」

一馬が私の唇にチュッとキスを落とした。

ちょっと前までキスするたびに過剰反応で身構えてしまっていたのに

「わかった」

笑顔で言葉を返せるようになったのは大きな進歩だ

でもいくら恋人同士だからと言って一緒に通勤するというのはさすがに

度胸がない。

というより、私に彼氏がいることは伏せておきたかったから

時間をずらして出勤している。


帰りは一馬と時間があえば会社から離れた場所で待ち合わせだけど

実際は私より課長である一馬の方が多忙だから一緒に帰ることは

ほとんどなかった。

でも明日は一緒に土鍋をかって鍋ができる。

テレサさんが帰国するまであと2日となったがそれまでは

楽しもう~そう思っていた。

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