恋の相手は強引上司
「真壁さ~~ん。すみません、休憩中だったのに・・・・」

お昼休憩が終わるまであと20分ほどあったのだが

スマホが鳴った。

相手は名取からだった。

先日客注品が届いたと連絡した中根様がご来店くださって

どうしても私に用があるので休憩が終わるまで待ってると言っているのだけど

平日であまりお客さんがいない時間帯に名取と中根様・・・・

間が持てないからどうしようと助けを求める電話だった。

中根様とは随分前からのお客様で

カフスか何かを選んで差し上げたのが周りに高評価をもらい

それから用事がある時は必ず私を指名してくださる

大事なお客様だ。

個人で設計事務所をやっていて

年齢は50前半だけどとてもダンディーでおしゃれな方だ

名取の間がもてないというのはかっこよすぎてドキドキしちゃう

という意味でもある。

「いいよいいよ。それより・・・・中根様は?」

私物袋をカウンター下に入れながら名取を見ると

「今ネクタイ見てます。すみません・・・なんか今日はお一人じゃないんですよ~~
しかもお連れの方もめっちゃかっこよくて・・・・ドキドキ半端ないんす。
でも中根様・・・真壁さんじゃなきゃダメっぽいし~~」

もったいないけど仕方がないといった様子で口を尖らせた。

「了解。ありがとう~~それよりまだでしょ?1番・・・行ってきていいよ」

「いいですか?じゃ~~」

「うん行ってらっしゃい」

私は客注品を引き出しから取り出しながら準備をしていた。

「真壁さん・・・・」

「なに?」

伝票を見ながら返事すると

「なんか最近凄く・・・・声が柔らかくなったような・・・・何かありました?」

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