恋の相手は強引上司
「待ち伏せって・・・・何か私に用事でも?」

もうこれ以上の言葉が見つからなかった。

「ちょっと前かな・・・・君がここで本を読んでいるのを外にいた時に見えたんだ。
その時の横顔がとてもきれいでドキッとしたんだ。
こんなこと信じないかもしれないけど僕も初めてで・・・・でもそれがきっかけで君に興味を持った。
どんな本を読んでるのかな?とか普段はどんなことに興味があるんだろう・・とかね」

今、翼君の口から発せられる言葉が全部私に向けて言っているなんて

信じられなかった。

もしかして夢でも見ているんじゃないの?

そうじゃなかったら・・・・新手の嫌がらせ?

17年間こんな経験は本当に初めてでどう言葉を返せばいいのか

もう頭の中が真っ白だった。

「・・・・・びっくりしたよね」

私は大きく頷いた。

「・・・・自分でもびっくりしてる・・・・っていうかさ・・・いい加減ここに座ったら?」

自分の横の席を指さすとおいでと手招きをした。

こんな光景誰かに見られたら何を言われるかわからないと思い

思わず周りをキョロキョロして誰もいないことを確認すると

手に持ってた本を握りしめながら遠慮がちに座った。

私が隣に座ったことに安心したのか体を後ろに反らして

「よかった~~」とつぶやいた。

そしてゆっくりと身体を起こすと

「これで帰られたら僕どうしようかと思って・・・・で?どんな本読んでんの?」

私の持っている本をさっと取り上げて自分の手に乗せた。

「へ~~~源氏物語か~~」

感心するように言われた。

「あっ・・・でもこれはわかりやすく現代の言葉に直したもので・・・・」

「やっぱ・・・あこがれる?源氏の君に・・・」

「え?・・・・別にそういうわけじゃ…ただ・・・
こっちの方が簡単に読めるかなって・・・それだけ・・なんだけど」

私は本を選んだ理由を言ったのになぜか翼君は

「俺にはできないな~~いろんな女の人とは・・・やっぱ・・・俺は一途でいたいな」

突然こんな展開になった私には翼君が源氏の君に見える・・・とは言えなかった。


このことがきっかけで私の夏は今までにない夏となった。
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