恋の相手は強引上司
無理やり引っ張られるよう入った店は会社から少し離れた
洋風のちょっと洒落た居酒屋だった。
いつも『あおい』で飲んでる私にはこういう若い人が喜びそうな
おしゃれな場所はなんだか落ち着かない。
「ねえ・・・いつもこういうとこで飲むの?」
メニューを見ながら聞くと
「いや・・・あまり来ないね。元々賑やかな場所は好きじゃないんだ。
だけど空腹には勝てないでしょ?」
「賑やかな場所が嫌いだなんて…意外です」
「なんで?」
「だって翼君の周りにはいつも人がたくさんいて・・・・賑やかだったじゃない」
「・・・・・まあね…とりあえず呼び出しボタン押すよ。適当に頼むけどいい?」
「・・・うん」
曖昧な返事をしながら翼君はボタンを押した。
高校の時、10年後にまさかこんな形で再会するとは思わなかった。
あの時は一緒に外で何かを食べるのも結局なく
一瞬で全てが終わったんだもん。
それがまさか一緒にお酒を飲むなんて・・・・
「まさか、恋実と一緒にお酒を飲むなんて」
げっ。同じこと思ってた?!
「それはこっちのセリフよ」
半分やけになって生ビールをごくごくと飲んだ。
そんな私の飲みっぷりに
翼君はニヤリと笑いながら見ていた。