恋の相手は強引上司
公園の真ん中に大きなジャングルジムがあった。

小さな公園のわりにジャングルジムだけがすごく大きくて思わず

「おおきい~~」と言ってしまった。

すると一馬は足を止め

「このジャングルジムのてっぺんまで登るよ」と言いながら私の手を離した。

「え?これ登るの?」

「そう!」

一馬はニカッと笑うが、なんで高速使ってまでジャングルジムに登らなきゃいけないの?

本当にこれがデートなのかと疑ってしまう。

一馬は・・というと私が驚いているのをよそにジャングルジムに手をかけさささっと登っていく

足が長いから一番とばしだ。

そしてあっという間にてっぺん・・・そして私を見下ろし

「お~い。早く登って来いよ」と手招きされ渋々登り始めた。

小さい時はくぐって中心からそのまま真っすぐ交互に登っててっぺんで遊んだものだが

成長し、大きくなった体では外側からよじ登るしかない。

小さい時はいとも簡単に登っていたものが今ではおぼつかない足取りで

落ちないように登るのが精いっぱいでなんともみっともない。

それでもやっとの思いで登ると一馬は「おそーい」と言うものの

自分の座っている隣にタオルハンカチを鉄の棒に

掛けてくれていた。お尻が痛くならないようにという


そのさりげないやさしさにドキュンじゃないか!


だけど私はそのことに対しても素直にありがとうと言えない残念は女になっていた。

これが名取だったらありがとうの大安売りをするぐらい言うんだろうな。

そして一馬の隣に座って前を見て私は言葉を失った。
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