恋の相手は強引上司
「いいよ。俺そういうとこ好きだから」

嘘でしょ勘弁してよ。

話をしたことを後悔した

「あっ・・・そうなんだ・・じゃなくてーやっぱり私―」

やっぱりこんなのありえない。

私みたい冴えない女と飲みたいだなんて何か魂胆があるに違いない。

詐欺師?

それとも勧誘?いきなり高額商品を売りつけられるとか?

断らなきゃ!そう思ったんだけど・・・・

「あ~~~ちょっとだけ待ってもらえる?ちょっと電話だけさせて?
俺が来るまでずっと待ってられると困るからキャンセルの電話するね」

「え?ちょ・・ちょっと」

断る間もなく男は私から少し離れた場所で電話をかけたはじめた。

私に背を向けているため会話はほとんど聞こえてなかったが

電話をかけている姿はカジュアルな服装に似合わず背筋がピンと伸びて

絵になるという言葉がしっくりくるけど

そんな悠長なこと言ってられなかった。

このまま走って逃げれば何とかなるかな・・・と周囲を見渡していると


電話がおわったらしく

笑顔で帰ってきたかと思うと私の腕を掴んだ

「な・・なに?この腕なんなんですか?」

男に免疫のない私は心臓がバクバクしていた。

「なんでって・・・逃げる気でいたでしょ。凄く警戒してるオーラがダダ漏れなんだもん。

大丈夫だよ。俺は単なるサラリーマンだし純粋に君と常連さんしか来ない居酒屋で

酒を飲みたいだけだから」

「分かりましたよ。でも・・この手、放してください」

これはどう言い訳しても無駄だと思った私は諦めて行きつけの居酒屋「あおい」へと向かった。
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