恋の相手は強引上司
デパートなんか本当に何年ぶりだろう。

最後にいつ来たのかさえ忘れるくらい遥か昔だったと思う。

元々人がたくさん集まるような場所は好きじゃない。

というか苦手。

人ごみに酔ってしまうし、お店なのにもかかわらず威圧感のようなものを感じる。

俺には庶民の味方の大型スーパーの方が断然いい。

だから彼女や友達が行こうと誘ってきても断っていた。

その断り方は頑なというか、意固地になっているのかも・・・

だから、そんな俺が自ら大越デパートへ足を運ぶなんて

明日は雨が降るかもしれない。そう思いながら中に入ると

「げっ・・・・帰りたい」

思わず心の声が口から出ていた。


甘ったるい香りが微かに漂うのはスイーツの甘さではなく

化粧品売場のせいだ。

いろんなブランドの匂いがミックスされて

正直長居したいとは思えなかった。

他にも高級ブランドと呼ばれるショップが立ち並び

場違い感半端なく苦手意識がより一層増した。

もう店員に聞いてさっさと選んでさっさと帰ろうとエスカレータに乗った。
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