恋の相手は強引上司
恋実は2本のネクタイを丁寧に両手で持つと

他にご入り用はございますか?と訪ねてきた

だから本来の目的を恋実に向かって笑顔でいってみた。

「スーツ選んでよ」

「はい?」

彼女の動きがピタリと止まった。

「この2本のネクタイに合うスーツを選んで欲しい。もちろん!
君がスーツ売場の人じゃない事はわかってる。わかってるけど・・・・君に
選んで欲しい」

もし断ろうもんなら少しぐらい脅してもいいとさえ思った。

だって、彼女なら絶対にドンピシャなスーツを選んでくれると思ったからだ。


「わかりました」

もっとゴネるかと思っていた。

売り場が違うだとか・・・・自分にはセンスがないだとか・・・・

だけどそれだけではなかった

「大丈夫ですよ。こういった事はよくあるんです。・・・殆どがご年配の
お客様ですけど・・・」

俺の前を歩きながら話すときは俺の顔が見えないからなのか

かなり饒舌になっている。

しかも・・・俺はどうやら年配の・・・おっさんと同等扱いかよ。


「ご年配ね~~」

溜息まじりにぼそっと呟くと恋実に聞こえたのだろう今度は慌てて

そういう意味で言ったんじゃない。と頭を下げるが

相変わらず人の目を見ないんだよな・・・・・
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