君のそばで会おう ~We dreamed it~
「でも、あの頃の可南子は、全部教えてくれたじゃないか。
交換日記に、俺が箇条書きに書いた質問にも丁寧に答えてくれてた。
それなのに、大人になった可南子は何も教えてくれない」
泣きそうな顔で真剣に話す想太を見て、可南子は楽しそうに笑った。
「想ちゃんは、今も中身は12歳の想ちゃんなんだね。
ちょっとホッとした」
「可南子は?
もう12歳の可南子じゃないのか?」
「うん、もう27歳の可南子。
だから、想ちゃんに言えない事もたくさんあるの。
ごめんね、想ちゃん」
想太は可南子が言えない何かを知りたくてたまらなかった。
でも、今日はもうやめておく。
可南子に嫌われたくないし、自分もこれ以上傷つきたくなかった。
想太は、3杯目のビールを飲み干した。
可南子は心配そうな顔で想太を見ている。
「でも、私があの時結婚しなかったから、今、こうやって想ちゃんと会えてるんだよ・・・」
想太はぼんやりとした意識の中で、なんとなく納得した。