君のそばで会おう ~We dreamed it~
想太の部屋には家具が一つもなかった。
リビングにはソファが一つ置いているだけで、テレビもない。
使い古しのスーツケースが部屋の隅に無造作に置かれているだけだった。
「ねえ、今から家具とか買うの?」
可南子が聞くと、想太は無理に笑った。
「ううん、このまま。
クローゼットがあるから家具とか要らないし、実際、家には寝に帰るだけだから」
「でも、これじゃ寂しすぎるよ」
「もう、慣れたから全然平気」
可南子は、想太が昔住んでいた福岡の団地を思い出した。
2DKの小さな家は、想太のおばあちゃんの愛で満ちあふれていた。
壁には想太が描いた絵が、棚には想太の赤ちゃんの頃からの写真が、所せましと飾られていた。
決して贅沢ではなかったけれど、可南子にとっても居心地のいい大好きな空間だった。
可南子はなんだか泣けてきた。
涙が止まらなかった。
「可南子、どうした?
大丈夫か?」
「想ちゃん、明日から夕飯はうちで食べよう。
分かった?
絶対だよ・・・」