君のそばで会おう ~We dreamed it~
想太には、見覚えのある卵焼きだった。
砂糖が多く入っているために、艶が出る分焦げがつきやすい。
想太の記憶が甦ってきた。
「これは、俺のばあちゃんの卵焼きに似てる」
「そう。
想ちゃんの家で頂いた、私も大好きだったおばあちゃんの卵焼きを真似て作ったの」
可南子は小皿に一つ取り分けて、想太の前へ出した。
想太はその卵焼きを一口で食べた。
「どう?」
可南子が不安そうに聞いてくる。
「うまい。
ばあちゃんの味と同じ味だ・・・
可南子、覚えていてくれたんだ・・・
本当にありがとう・・・」
想太は胸が詰まって言葉がうまく出なかった。
ずっと下を向いたまま味わっていると、
「想ちゃん、おばあちゃんの思い出まで封印しちゃだめ。
優しかったおばあちゃんの事は、いっぱい思い出してあげなくちゃ」
頑なに閉ざされた想太の心は、もう、可南子の魔法で溶けだしていた。