君のそばで会おう ~We dreamed it~


可南子は福岡空港に着いてからずっと想太の様子をうかがっていた。
可南子が見るからに、そんなに変わった様子もない。


「想ちゃん、直接、会議のある駅近くのビルまで向かおうか?」



「うん、そうしよう」



「地下鉄で行く?タクシーにする?」



「部長だし、そりゃタクシーだろ」


可南子は想太の普通の態度にホッとして、タクシーに乗り込んだ。

でも、タクシーの中の想太はずっと黙り込んで外を眺めている。


「俺さ、福岡の記憶って、家の近所か、学校の周りか、可南子の家くらいしかないことに今気づいたよ。
ばあちゃんと二人だったから、遠出したり、街まで出かけたりってなかったからさ。

だから、今、この窓から見えてる福岡って、全く知らない街みたいだ」



「じゃ、ホテルと会場と福岡支社の往復だったら、全然、大丈夫だね。

良かった・・・」



可南子はそう言うことしか言えなかった。
少年時代の想太の生活をよく知っていたから・・・



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