美しき夜、北斗七星が輝く
今日も莉々花の話を
右から左へと流して聞いていると
「黒木さん!
ちょっと良いかしら?」
先を小谷さんと歩いていた黒木さんが
僕の後ろから来た音楽教師に引き止められた
「何ですかー!」
「渡しそびれたプリントがあるの!」
黒木さんは小谷さんに教科書など預けると
音楽教師の元へ走って来た
流れで僕と面と向かうことになる
黒木さんがこちらを向いた瞬間
まるで金縛りに合ったみたいに
僕の足は急ブレーキをかけて停まった
隣を歩く莉々花が
不思議そうな顔をして何か言ったけど
僕の耳には何も聞こえて来なかった
「…………」
黒木さんは小走りだった足を停めた
そして僕のことをジッと見ると
「…………」
顔を伏せて僕の横を通り過ぎて行った