美しき夜、北斗七星が輝く
ハッと樹が鼻で笑う
「……莉々花のこと悪く言わないでよ」
「は?」
「だから…
莉々花のこと…悪く言わないでよ」
「はあ?
お前…アイツを庇うわけ?」
「…そういうわけじゃ…」
「そうだろ?
何が“莉々花を悪く言うな”だよ
黒木さんがお前のこと
どう想っているのか知らねぇのか?
知っていてお前は
アイツを庇うのかよ」
「いっ…樹……」
「別に良いよ
お前にとってあの女は
黒木さんより下だったんだよな
前から不思議には思ってたよ
お前たちが許嫁だって聞いた時からな
結局斗真にとって黒木さんは
結婚相手が日本に戻るまでの間の
いわば身代わりだったんだろ?」
「…結婚相手……」
「許嫁は結婚相手だろ
そんな奴がいるのに
黒木さんを彼女とか言ってさ
身代わりにされた黒木さんの身にもなれよ」
「……」
「…またそうやって黙り込むのかよ
良いよ良いよ
お前はそういう奴だってわかった
優しいと思っていたけど
大事な人1人守れないんだな
そんな奴だとは思わなかった
お前には失望したよ」
樹は僕に踵を返して行ってしまった
いつの間にか樹は制服姿だった
黒木さんも制服姿だったから
1人廊下にジャージ姿の僕が残された