イジワル社長と偽恋契約
手が止まり、私は亜希子さんから目が離せなくなる。




「秘書のあなたを娘のように思っていたから、旭の結婚相手はあなたにしたがっていたわ…タイミングを見て会わせたいと思ってたみたい」


すると亜希子は「あ、そうそう」と思い出したように言ってさっと手を洗うと、

リビングの棚から何かを出して戻って来た。







「あなたと宏伸さんの写真」

「これは…」


亜希子さんが持ってきた写真には、まだ入社したての私と宏伸社長が写っている。

私はその写真を手に取った。



まだ着こなしていないスーツを身につけ、メイクだって下手で笑顔もどこかぎこちない。


緊張しながら写真に写る私…

その隣には優しく笑う宏伸社長…





「宏伸さん…これを私にくれた時……「将来本当の俺の娘にしようかと思ってる」って言ってたわ。だからどんな形でもあなたと旭は出会う運命だったのかもしれないわね」


私の背中に寄り添う亜希子さん。

私は涙が溢れてきた。





「私幸せです。こんな素晴らしい方とその息子さんとお仕事が出来て本当に幸せ。これからも精一杯頑張ります」

「天国であの人もきっと喜んでるわ。私もね、次生まれ変わったらその時はきっと宏伸さんと結婚するの」


片思いしている少女のように言う亜希子さん。

私はそれを聞いて「そうですね」と笑顔になった。











「手伝わして悪いな。疲れたろ？」


時間も遅くなってしまい、その日は旭さんの実家に泊めてもらうことに。

お風呂を済ませた私と旭さんは、客室で2組敷いた布団の上に寝転がり薄暗い部屋で話す。
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