イジワル社長と偽恋契約
ブーーブーー…


またスマホが震えてポケットから出すと、今度は親父からの着信。

俺は迷わずに電話に出た。





「はい」

「我が相棒よ、最近はどんな調子だね?」


親父は俺のことを「相棒」と呼び、よくこうやってちょくちょく電話して来る。

一応大手企業の社長なのに、なんでこんな暇があるのか不思議だ。





「最近て…3日前も電話しなかったっけ?」

「ハハハ、そうだったな」


明るくて落ち着いて話す親父の口調。

当たり前だけど昔から変わってない。






「良かったら今夜飲まないか?いつもの店で」

「…いいよ」


その夜。

早めに仕事を切り上げた俺は、親父と行きつけの和食居酒屋で会い夕飯を食べがてら酒を飲んでいた。






「で、例の工場建設の事だけど…うちとしては…」

「食事中だぞ。仕事の話はなしだ」


注意した後で刺身を食べる親父。

俺は顔をしかめながら冷やの日本酒を飲む。





「何でだよ。親父に聞きたいこといっぱいあるんだよ」

「お前はうちと別会社だ。話すことなんてないよ」

「…」


わざとらしく言ってそっぽを向き、たばこをぷかぷか吹かせる親父にムッとする。


親父はいつもこうだ。

仕事の話をあまり俺にしてくれない。


俺は早く親父に追いつきたいのに…
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