イジワル社長と偽恋契約
あいつは俺のことで散々悩んでいたらしく、

こっちは付き合っているつもりでいたと話すと嬉しそうに顔を赤らめた。



こんな嬉しいことはない。

気がつくと俺も笑顔になっていた…



三井が好きだ。

心から愛している…









「ここにいたんですか…」


それは年末に俺の実家に帰った時のこと。


俺は祖母を寝かしつけた後で自分の荷物が置いてある部屋に入りぼんやりとしていたら、妙が部屋の中を覗き込んでくる。


三井との関係は順調で俺は「妙」と呼ぶようになっていた。






「ああ…お袋は?」

「お風呂です。おばあ様が御手洗に起きてまた寝たことろで…この部屋の明かりが見えたので…」

「え、悪いな…ばあちゃんが起きたの気づかなった」

「いえいえ。思っていたよりも元気で安心しました。悪いのは足だけで他は元気そうですし」


妙は部屋に入るとドアをそっと閉めて、俺の隣にやって来る。


お袋の相手と祖母の世話までしてくれる妙。



仕事のパートナーとしても恋人としても…

彼女は完璧だ。


親父が妙を可愛がっていた理由がようやくわかってきた。






「この部屋は…?」

「俺の荷物だよ。子供の時から使ってた物とか…」

「へえ~」


妙はキョロキョロと部屋中を見渡すと、物珍しそうな顔をしていた。





「そこにある物は全部親父が買ってくれたたんだ。そのサッカーボール…もう古くて汚いけどよくこれで親父とサッカーやったりした」


親父が買ってくれた物は全て捨ててない。

俺にとっては全部が形見みたいなもので、宝物なんだ…





「このサッカーボール見てるだけで…宏伸社長がどれだけ旭さんと遊んでくれたのかわかります。2人の姿が目に浮かぶようですね」


妙は俺に笑顔を見せた。

俺は手を伸ばして妙の肩を抱き、自分の方に引き寄せる。
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