イジワル社長と偽恋契約
「遅くなりそうだからお前は先に帰っていいぞ」

「…はい」


こんな台詞も最近は増えた。

しょうがないとわかっていても、この言葉はどうしても寂しく感じてしまう。





「じゃあな」

「はい…」


ネクタイを私が直す暇もないまま、旭さんは社長室から出て行ってしまった…

1人になった私は、デスクの上にある飲み掛けのコーヒーカップを片付ける。



給湯スペースの流し台でカップを丁寧に洗うと、

さっき旭さんに触れられた髪や腰の辺りを触り彼のことを考えていた…





言葉に出来ないくらい旭さんが好き…



こんな気持ち…


どう現したらいいんだろう…



彼を考えると胸が苦しくなって


気がついたら目をつむって


にやけそうになる顔を必死で我慢する…




あんなに素敵な人が私の恋人だなんて今だに信じられないけど…

本当に恋人なんだよね…


恋人…だよね…




急に不安になってきた…

バカみたい…


しかもちょっと泣きそうにもなって来たよ…

本当にバカみたい…


私はその日どうしても先に帰る気にならなくて、旭さんの仕事が終わるのを社長室でずっと待っていた。
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