イジワル社長と偽恋契約
「ごめん…嘘。今の忘れて…」


鞄を肩に掛けようとした時、旭さんが後ろから私に抱きついて来て耳元でそう呟く。

熱で熱い旭さんの体温が背中から伝わり、漏れる息までも熱い…






「旭さん…?」


声をかけると、彼は私にもたれかかってぼそぼそと口を開いた。




「…自分が弱ってる所なんて…彼女に店なくないと思うのが普通だろ」

「え?」

「俺はお前の前では社長で居たいんだよ。こんな部屋着姿で一日中寝てる所なんて見せたくない」


彼がそんなことを思っていたなんて初めて知った…

私は何故か温かい気持ちになり旭さんの手にそっと触れると、彼と向かい合って顔を合わせる。






「見せてください。どんな旭さんでも私は受け止めますよ…笑ったりなんて絶対にしません」


もっと色んな旭さんを見たい…

社長の仮面を取った彼もまた…きっと大好きになると思うから…


すると旭さんの顔が私に近づいて来て、私の唇の前で止まると少しずらして頬に軽くキスをして来る。





「移したら大変…」

「そうですね…」

「早く治さないとキスも出来ないな。たまから真面目に寝るよ」


スッと立ち上がると、旭さんはミネラルウォーターを持って寝室に入って行った。

私はクスクス笑いながら見ていると、旭さんが布団に入る前にこっちをくるっと振り返る。
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