イジワル社長と偽恋契約
「そろそろ社長の挨拶なので準備をお願いします」

「わかりました」


並んで先に会場に戻って行く旭さんと副社長。

私は会場に入る前に近くのトイレに駆け込み軽くメイクを直した後、少し出遅れて会場に入った。






ざわざわ


会場内は先程同様社員達で溢れかえっていて、それぞれがステージに注目していた。


ちらっとそっちに目を向けるともう旭さんがステージの中央に立っていて、

スタンドマイクに向かって声を出した。





「白鷺ハウス株式会社の創立50周年、誠におめでとう御座います。本日この記念すべき日にご挨拶できることは誠に喜びにたえません」


低くて男らしい声が会場に響き渡る。

マイク越しの旭さんの声は、いつもにも増して色っぽくてかっこよく聴こえる。





「50年という長き日の発展誠に慶賀の至りであります。

…父である二代目の白鷺宏伸社長は活気とやる気で満ち溢れ近づくのも怖いくらいでした。

今だから正直に申しますと、朝から晩まで働き詰めの社長に付き合うこちらの方がまいってしまう程だと以前正社員から聞いたこともあります。

家族の皆さんの労を思うと本当に心苦しく存じます」


会場が笑いに包まれる。

私も思わずクスクス笑った…
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