イジワル社長と偽恋契約
「しかしそのような犠牲があったからこそ会社設立が成功し、

また社員の皆様のご苦労やご協力によって本日このような素晴らしい記念式が出きたものだと思います。

父に代わりこの場でお礼を言わせて下さい」


マイクの横に立ち深く頭を下げる旭さん。

そしてまたマイクに向かうと、社員達を見ながら話し始めた。






「父が亡くなり私のような若造が三代目社長になるなんて…

普通なら考えられない事ですし、不安に思った方もきっといると思います。

自分でもそうでしたから…」



彼も彼なりに不安だったんだ。

当然の事だけど当時はそんなふうに見えなかったな…

自信家で何も考えてない人だと思ってたけど、全然違った。


彼はとても繊細で優しい人なんだ…





「しかし祖父と父が遺してくれたこの会社を、私は何が何でも守っていこうと思っています。

愛すべき正社員の皆さんに恥じないよう、

全力で頑張って行くので改めてよろしくお願い致します」


会場が温かい拍手に包まれる。

私は少し泣きそうになったが、何度か瞬きをしたりして誤魔化した。



宏伸社長が亡くなって突然社長に就任したのに…

旭さんは努力して何とか会社を持ち堪えたんだ。
< 141 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop