イジワル社長と偽恋契約
旭さんは別室で着替え中…

きっと着替えなんてとっくに終わっている頃だろうから、お母様やお祖母様達と朝食でも食べているだろう。


私はいつお母様達に会えるかな…

早く挨拶したい。





「ほぇ~目か仕込めば化けるもんね。プロのメイクさんてのはやっぱり凄いわ」

「腕が違うからだな!」


後で私の出来上がっていく顔を、ジロジロと見る私の両親は田舎者丸出し。

弟なんて社会人のくせして、ソファーに座ってのんきに東京駅で買った駅弁に夢中だし…

全く緊張感のない一家だ。





「ちょっとはピシッとしてよね?娘の結婚式にこんなほのぼのしてる家族いないって」


友人の結婚式に何度も出席してきた私だが、新婦の家族は皆こんなヘラヘラした感じではなかった気がする。

もっと緊張感あったような…





「妙があんな立派な方の所へ嫁に行けるなんてな…」

「死んだじーちゃんばーちゃんのお陰だ。ありがとう」


両親揃ってその場で手を合わせて拝み始め、さすがにメイクさんも我慢出来ずに吹き出していた。

私は小さくなりながら「すみません」と小声で謝った。
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