イジワル社長と偽恋契約
肩を震わせて突然笑い出す旭さんは、からかうような顔をしてクスクスとしばらく笑い続けた。


何が可笑しいのか全くわからない私は、険しい顔をしながら彼の笑いが収まるのを待つ。





「やっと本性を見せたな」


ふふんと笑う旭さんはどこか嬉しそうで、私の頭からはカチンという音が聞こえた。


表情を崩さないようにポーカフェイスでいたいのに…彼はそれを阻止するように挑発的な態度をとる。


余計に腹が立った私は保っていた物が上から崩れていくのを感じながら、必死で堪えてきたものを開き直って全て取り離した。






「そうです!これが私の本性ですよっ!!」

「変なおじさんの登場と似てるフレーズだな」


またしても人をバカにするようにな態度を…

誰かにこんなに見下されたのは初めて!


絶対許さないんだから!

女でしかも見た目がちょっと地味だからって甘く見てるでしょっっ





「初めて会った時から自分を必死に隠そうとするお前を見て内心笑っていたよ。本当は
秘書なんて柄じゃないだろう」

「秘書顔じゃなくて申し訳ありません」


世間の秘書のイメージってよくわからないけど…


私は派手でも目立つタイプでもない。

キラキラした華々しい人生を送ってきたわけでもなく、至って普通で平凡だ。





「父の秘書なんて言うからどんな女かと思えば…ある意味想像を超えたな。真面目なフリをしているけど裏ではどうせ父と愛人関係だろ?」

「…止めてください!」


旭さんの発言を全否定するように大声を出す私。


本心なのかふざけてなのかわからないが、どうしてそんな陳腐な質問をしたのか信じられなかった。



本気で腹が立った私は怒りを通り越して旭さんを軽蔑したように見ると、それを察したのか彼も顔つきが変わる。





「私を馬鹿にするのは構いませんが、社長をそんなふうに言うのは止めてください」


もっと怒りたかったのに…

それ以上言葉が出てこない。


本気で頭にきていた。


目をそらして唇を噛み締めると、旭さんは意外にも申し訳なさそうな雰囲気を出した。






「済まない。今のは忘れてくれ」

「…」


謝られても怒りはおさまらない。

それに忘れる事なんて出来なそうだ…


この人をより嫌いになったが、嫌いだからといって無視するわけにもいかない。


ここは学校なんかじゃなく仕事場。

これから戦場化するであろうこの社長室で、私は目の前の敵である大将に改めて挑戦状を贈った。






「色々とありますが…現実を受け止めましょう」
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