イジワル社長と偽恋契約
真希が私の気持ちを察してくれた事に、アルコールが入った体が反応する。

私はきっと今気が抜けたらいつでも泣けるだろう…



幸せな2人と失恋した女…

この差は一体何…?

私が何をしたっていうの…




だけどそんな事は負け犬の遠吠えにしか過ぎないこともわかってる。

私はただ遥也を一方的に好きだっただけだし、香苗が横取りしたとかそんなことは全くない。


好きな人に告白すら出来なかった女の、

今日は悲し過ぎる日とでも言っておこうか…





「妙~真希~」


すると、私達のいるテーブルにたくさんの花がついたピンクのドレスを着た香苗がやって来た。





「香苗」

「こっち向いてー」


私はすぐに笑顔になると、真希がスマホのカメラで私と香苗のツーショットを撮ってくれた。





「香苗すごく綺麗…かわいい」

「ありがとう!今日だけは調子乗らせてね~」


クククと笑う香苗は大学時代から変わらない笑顔。


すごく幸せそうで私も素直に可愛いと思うし、

きっと今日の香苗は世界で一番綺麗だと言ってもいいくらいだ。





「あ、妙のグロス薄くなってる。私持ってるから使いなよ」


私の口元を見た香苗は、持っていたポーチからグロスを出して私に差し出す。




「いいよ。どうせまた取れるし」

「ダメダメ!ほらこっち向いてみ?」


香苗は私の顔をぐいっと自分の方に向けると、手馴れた手付きで私にグロスを塗ってくれた。




「ほら可愛くなった♪」

「ありがとう」


ニコッと微笑む香苗を見て、私も自然に顔がほころぶ。


香苗はすごくいい子。

遥也が香苗に惚れたのも納得出来る。






「よ!」


そこに黒いタキシードを着た遥也が近づいて来て、香苗の肩を抱き寄せるとそのまま隣の椅子に腰を掛けた。


いつもラフでジャージ姿が多かった遥也が、タキシードを着てる時点で吹き出しそうになる…




「おい妙!お前には悪いけど先に幸せにならせてもらうぜ♪」

「はいはい。どうせ私は売れ残りですよ」


香苗越しにからかってくる遥也は、大学時代から変わらない遥也のまま。

いつも私をからかってケラケラ笑ってる。


遥也からすれば私はただの女友達で、良くいえば腐れ縁というやつ。

向こうからすれば気を許してる女友達くらいの存在だろう…





「お前も早くいい男見つけろよ」

「痛っ」


遥也は香苗の肩を抱いている手をこっちに伸ばして来て、私の頭をコツンと叩いた。





「妙なら絶対いい人見つけられるよ!まだ運命の人に出会ってないだけだよ」

「もう28歳だしな~ボケッとしてると手遅れになるぞ」

「そこの夫婦!うるさい!」
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