イジワル社長と偽恋契約
怒る私を見て笑う香苗と遥也を見て、私は今日改めて遥也に失恋した。
そして過去の自分の密かな気持ちにそっと別れを告げた…
「あー結構飲んじゃったな。ま、明日は休みだからいっか」
二次会からの帰り道。
ほろ酔い気分で駅まで真希と歩く私は、ろれつの回らない声で言ってぐーんと体を伸ばす。
「そういえば仕事の方はどう?妙はこう見えても“社長秘書”だもんね!かっこいい~」
「こう見えてもって何よっ」
自分が他人からどう思われているかはよくわからないが、私の職業は一応社長秘書である。
工業住宅・建設業界の最大手である有名企業「白鷺ハウス工業株式会社」の社員で、主に住宅、建築、リゾート、都市開発を事業としている建設会社。
その会社の代表取締役社長である白鷺 宏伸(しらさぎ ひろのぶ)の秘書を任されている。
香苗と遥也が愛を育んでいた大学時代。
私は様々な資格や検定を取得して、その中でも秘書という職業にいつしか興味を持つようになり秘書検定をクリアしたと同時に、将来の夢も決まったといった感じであった。
今の仕事について早5年。
仕事は楽しいし、キャリアを積むにつれてやりがいを感じている。
このまま仕事ばかりに没頭する人生でいいのだろうか…
気がつけばもう28歳。
成人式以来、考え方や私自身は何も変わってないのに周りはどんどん変わっていく。
時間の流れは恐ろしいくらい早い事を目に見えるように自覚してきているから、遥也の言うように本当にやばいかも…
「社長の世話ばかりしてないで自分の事も少しは考えないと」
「わかってるけど…」
真面目に心配する真希に、私は目をそらしながら頬をポリポリとかいた。
「そ、そういう自分はどーなのよっ」
真希だって大学時代に一瞬付き合ってた先輩以来、浮いた話聞かないけど?
「あーうん、私も…それなりにね」
頬を赤らめる真希を見て、新たな男の匂いがプンプンした私はくすぐったくなった鼻をすぐに啜った。
「良かったねぇ~みーんな幸せそうで何より…」
「いじけないでよ~」
歩道の端に寄り暗くなる私の後ろから抱きつく真希に、よしよしと慰められる。
大学の頃から真面目で大人しかった真希は、軽い気持ちで男と触合う事すらしないタイプ。
本当に好きになった人にしか心を開かない真希が、こんな少女のような顔をするんだから相当いい人を見つけたんだと悟った…
「いい人が見つかったみたいで良かったね。今度機会があったら紹介してよ」
「うん、もちろん!」
私は真希と近々また会う約束をして駅で別れ、そのまま寄り道もすることなく真っ直ぐ自宅に向かった。
「…ただいま」
家のドアを開けて真っ暗な部屋に電気をつけると、キッチンへ行きミネラルウォーターのペットボトルを出した。
そして過去の自分の密かな気持ちにそっと別れを告げた…
「あー結構飲んじゃったな。ま、明日は休みだからいっか」
二次会からの帰り道。
ほろ酔い気分で駅まで真希と歩く私は、ろれつの回らない声で言ってぐーんと体を伸ばす。
「そういえば仕事の方はどう?妙はこう見えても“社長秘書”だもんね!かっこいい~」
「こう見えてもって何よっ」
自分が他人からどう思われているかはよくわからないが、私の職業は一応社長秘書である。
工業住宅・建設業界の最大手である有名企業「白鷺ハウス工業株式会社」の社員で、主に住宅、建築、リゾート、都市開発を事業としている建設会社。
その会社の代表取締役社長である白鷺 宏伸(しらさぎ ひろのぶ)の秘書を任されている。
香苗と遥也が愛を育んでいた大学時代。
私は様々な資格や検定を取得して、その中でも秘書という職業にいつしか興味を持つようになり秘書検定をクリアしたと同時に、将来の夢も決まったといった感じであった。
今の仕事について早5年。
仕事は楽しいし、キャリアを積むにつれてやりがいを感じている。
このまま仕事ばかりに没頭する人生でいいのだろうか…
気がつけばもう28歳。
成人式以来、考え方や私自身は何も変わってないのに周りはどんどん変わっていく。
時間の流れは恐ろしいくらい早い事を目に見えるように自覚してきているから、遥也の言うように本当にやばいかも…
「社長の世話ばかりしてないで自分の事も少しは考えないと」
「わかってるけど…」
真面目に心配する真希に、私は目をそらしながら頬をポリポリとかいた。
「そ、そういう自分はどーなのよっ」
真希だって大学時代に一瞬付き合ってた先輩以来、浮いた話聞かないけど?
「あーうん、私も…それなりにね」
頬を赤らめる真希を見て、新たな男の匂いがプンプンした私はくすぐったくなった鼻をすぐに啜った。
「良かったねぇ~みーんな幸せそうで何より…」
「いじけないでよ~」
歩道の端に寄り暗くなる私の後ろから抱きつく真希に、よしよしと慰められる。
大学の頃から真面目で大人しかった真希は、軽い気持ちで男と触合う事すらしないタイプ。
本当に好きになった人にしか心を開かない真希が、こんな少女のような顔をするんだから相当いい人を見つけたんだと悟った…
「いい人が見つかったみたいで良かったね。今度機会があったら紹介してよ」
「うん、もちろん!」
私は真希と近々また会う約束をして駅で別れ、そのまま寄り道もすることなく真っ直ぐ自宅に向かった。
「…ただいま」
家のドアを開けて真っ暗な部屋に電気をつけると、キッチンへ行きミネラルウォーターのペットボトルを出した。