イジワル社長と偽恋契約
「ああ…返事ね。ごめんごめん」


後でゆっくり返事すればいいと思ってたからすっかり忘れてた…


どうしよう。

どうやって断ったらいいのかわかんない…





「遥也に言ったらすごく楽しみにしててさ~どっかいいお店知ってる?」

「いやあのっ…ちょっと待って!私は今回はその…」

「え?もしかして行けないの?なんでよー !」


キャンキャンうるさい犬のように叫び出す香苗。

元々声のトーンも高いからか、余計に耳がキーンと痛くなる。





「えっと…」


考えろ!考えろ!

なんでもいいから嘘を付けばいいんだけど、あー出てこない!





「………あのね実は~そのぉ…あ!」


なんとなく適当な嘘が喉の手前まで出かかった時、後ろからスッと手が伸びてきて私のスマホを奪った。

ビックリして振り返ると後ろには旭さんがいて、私のスマホを耳に当ててニヤリと微笑む。





「もしもし?白鷺です。…はい、この間はどうも」


香苗と電話で話始める旭さんを止めようとしたが、私は彼にがっちり頭を押さえられてガードされている状態。


何してるの?

何する気?


この人本当に信じられないことするっ





「はい、いいですね。ではこちらで店は探しておきますのでまた改めて妙から連絡させます。はい、では…」

「…何してるんですか!」


電話を終えた旭さんは私に「ん…」と言ってスマホを返すと、私の鋭い目つきを見てまた笑った。




「次の勝負が決まったな」

「はい?」


目を輝かせる旭さんはそう言うと、私の肩をポンと叩いた。

軽く叩かれたのに肩どっしりと重いものを感じ、私はまだ勝負が始まる前からどっと疲れが全身にのしかかった気がした…






ブォォォン……


そして数日後。

香苗が計画した食事会と言う名のお互いの彼氏を紹介し合う会が開かれ、

仕事を早く切り上げた私と旭さんは、約束場所である都内のイタリアンレストランに車で向かっていた。





「…恋人の演技……ですか?」

「そう。いかに友達の前で恋人を演じ切れるかが今回の勝負。恥ずかしがったり嫌がったりしたら負けになるからな」

「はぁ…」


そんなの絶対無理!

友達の前で旭さんとイチャイチャするってことでしょ?

本当に付き合ったとしても、そんなこと恥ずかしくて出来ないタイプなのに…





「判定はもちろん俺だ。いいか?お前が負けたらまた命令を増やすから」

「…わかりました」


それだけは阻止したい。

毎朝早く起きて朝食作るのはしんどいのに、これ以上苦労を増やしたくないよ!
< 35 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop