イジワル社長と偽恋契約
「お手並み拝見てとこだな。お前の演技力を俺が見極めてやる」


結局…ジャッジするのは旭さん本人なのね。

最初から有利な位置に立ってる…いいけどさ。


気の乗らない食事会だったが、旭さんがちゃんと恋人のフリをしてくれるみたいなのでそこだけは安心していた。







「いらっしゃいませ。お連れ様方は先にお席についていらっしゃいますよ」


都内のおしゃれなイタリアンレストランに着くと、品のいいウェイターが予約していた個室まで私達を案内してくれた。


みんなもう来てるのか。

私達も早めに来たつもりだったのに…張り切ってるな。





「あ、きたきた！」

「待ってたよ！」


私と旭さんが部屋に入るなり、香苗と真希が私に駆け寄って来てキャッキャとはしゃぐ。

ちらっとテーブルの方に目を向けると、遥也と大人っぽい雰囲気のある男性がいて、すぐさま旭さんに挨拶していた。


私達も席に着くと、とりあえず飲み物だけ頼んだ後香苗が場を仕切り始める。






「えっと…まず真希の彼氏から紹介してよ♪」


香苗の言葉に真希は、少し照れながら隣にいる彼氏を紹介し始めた。

こんな真希を見るのはかなり久しぶり。






「あの…うちの彼は……」

「真希の勤め先のカフェのオーナーの西崎です。いつもこいつがお世話になってます」


西崎さんは真希の頭を撫でた。

彼は身長が高くあご髭を生やし長めの髪の毛を一つに縛っている。

落ちついた雰囲気と大人の男性というようなオーラがあり、とてもモテそうだった。






「よろしくお願いします」

「カフェのオーナーなんてかっこいいですね！」


堅く頭を下げた私に対して、香苗は人懐っこい感じで西崎さんに質問していた。

こんな時に可愛く振る舞えない自分の職柄が出てしまって、恥ずかしくなる。


そんな私に気づいたのか隣に座っている旭さんは、みんなに気づかれないようにクスッと笑った。






「私達は新婚ホヤホヤでーす！どうぞよろしく～」


香苗は遥也の腕を組んでニッと笑った。

明るくて元気な香苗夫婦を見て、私は改めて憧れを持った。
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