イジワル社長と偽恋契約
旭さんの横顔を見ながら考えて見てもまだちゃんと答えが出ない。

もう少し時間を重ねてみないとダメなんだろうか…


じっと横顔を見ていたら、旭さんが急にこっちを振り返って来て私の頬をつねってくる。





「何ガンつけてんだよ」

「そ、そんなつもりは…」


ムードなんてまるでない。

こんな日常なのに何で旭さんが気になるんだろう…


そりゃあこんなに顔が整ってる人なんて今まで私の範囲内にはいなかったし、性格には少々難があるけど優しいところもある。

ただ単に自分の中ではレベルの高い男性が物珍しくて浮かれているだけなのか、それともこれは恋なのか…

確かめる素手があればいいのに…








「…ったく。30分も会議押しなんて考えられない」


取引先からの帰り道。

旭さんは愚痴をこぼしながら車を運転していた。


彼は自分で運転して移動するのが好きらしく、自分の車で行くとことが多い。






「いいじゃないですか。おかげで会議は上手くいったわけですし」

「あれだけ待たせたんだ。こっちの要求を飲んでもらわないと割に合わない」

「もう忘れましょう。これから社長の好きなレストランでランチなんですから」


ここは好物で機嫌を直してもらうしかないな…






「ちゃんと予約は取ってあるんだろうな?レストランでも待たされるなんて御免だぞ」

「大丈夫です!バッチリですから!それに会議が押した分午後からのスケジュールも調整したのでゆっくりとお食事なさってください」

「…合格だ」


怖い顔をしていた旭さんの表情が少しだけ柔らかくなって、私はホッとしながらもどこか嬉しかった。
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