イジワル社長と偽恋契約
考えられるのは一つしかない。

今自分が乗ってる車の運転手…

彼の存在が私にとって大きなものになっているというのが明らかだった。





「…っ!」


しばしの停止後。

隣に目を向けるとちょうど信号待ちになっていて、旭さんは私に顔を近づけ睨みつけていた。





「…ちゃんと聞いてんのかお前は」

「は、はい!聞いております」


少しの間違う世界に行っていたけど、今は戻って来て自分の気持ちの変化に戸惑っているところ。





「男と酒を飲むなんて止めとておけ」

「…大丈夫ですって。男っていっても今は友達の旦那としか思ってませんし」


親友の旦那でせいぜい昔から知ってる腐れ縁という感じかな。

何だかんだで遥也とはこの前の食事会以来会ってないし、私も久しぶりに会いたいと思っていた。




「わかんねえ奴だな。多少ドジで頼りない部分もある危なっかしい奴だけど、お前は俺の大事な部下だ。傷ついて欲しくないんだよ…新婚野郎の誘いなんてさっさと断れ」

「…そんなに心配しなくても大丈夫です。もうOKしちゃいましたし」


私の言葉を聞いて旭さんは呆れたように「バカ…」と呟いた。





遥也なんかの事よりも「俺の大事な部下」と言ってくれた旭さんの言葉に浮かれている私。

今の言葉を録音したいくらい嬉しい…





「…そんなに欲求不満なら俺が満たしてやる。お前は部下だしサービスしてやるよ」

「なっ…!」


思いもしなかった言葉を言われた私は、顔が真っ赤になり手をバタバタさせる。
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