イジワル社長と偽恋契約
「からかわないで下さい！！何言ってるんですかっ！」

「からかってなんかいない。そんな浮ついてる奴なんかと会うくらいなら俺といいことしてた方がマシって言ってるんだ」


どう見てもからかってるとしか見えない。


私の事を心配してくれているのはわかるけれど…

もっと別の言い方はないのか…





「ご心配は嬉しいです。でも遥也が私を女としてなんて見てませんよ」

「…どうだかな」


ギロりと私を睨む旭さんを見て苦笑いを返すと、遥也からまたLINEが来て今夜の待ち合わせ場所の店と時間が書かれている。


それを確認しているとじーっと視線を感じてふと横を見たら、旭さんが私のスマホを覗き込んでいた。






「何やってるんですか…？」

「目黒の焼き鳥に19時ね…」

「口に出さなくていいです」


もう…と呆れながらスマホを旭さんから遠ざけた私は、内心嬉しいと思いながらもこの日は1日中彼に小言を言われる日になった。


まるで自分の親か兄のような立場になっているのだろうか…

旭さんの態度にそんな事を感じなから仕事を終えると、私は待ち合わせ場所の都内の焼き鳥屋へと向かった。







「妙ー！」


お洒落な雰囲気のその店はまだ開店して間もないもいうのにもう席はいっぱいになっていて、

店内に入るなり先に来ていた遥也が私に手を振って来た。







「ごめん。待たせた？」

「いや、さっき来たところだよ」


遥也は先に生ビールを頼んでいて半分くらい減っていた。

私も同じものを頼みコートをハンガーにかけて一息つく。





「香苗は？まだ仕事なの？」

「…今日は休みじゃないのか？多分家にいると思う」

「え…？」


「さあな」と言って首を傾げながらビールを飲む遥也に、おしぼりで手を拭いている手が止まる。
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