イジワル社長と偽恋契約
寝室から出ると、キッチンでお湯を沸かしていた旭さんが私に話しかけてくる。





「物置部屋から新しいシャツを取ってきてくれないか」

「…はい、新品のシャツですか?」

「ああ…最近忙しくて洗濯出来ないから着たら処分して新しいの買うの繰り返しなんだ」


冷蔵庫を開けながらあくびをする旭さんは、そう言ってポリポリと腕をかいた。





「そんな…洗濯なら私がやりますから申し付けて下さい。あまり着てないのに処分するなんて勿体無いですよ」

「…わかったよ」


親に小言を言われた息子のような顔をする旭さんは、素っ気なく返事をした。

私は言われた通り寝室の隣の物置部屋に入ると、手探りでスイッチを探して電気を付ける。







「あった…」


仕事類からプライベートの物まで溢れかえってる部屋の中に、

袋に入った山積みにされているロンTを見つけ手に取った。



パッと見ただけでも20枚近くあるその袋を見て、買い物に行くのを億劫がる旭さんの性格が出ているなと思った。


私がマメに洗濯しに来るしかないな…

旭さんの家のキーは前から預かっているから、時間を見つけてここに来るか私の家で洗濯しようかな。

それか仕事中にコインランドリーに行くか…



合い鍵を貰った頃はまだ旭さんの事を好きではなかった時だから何とも思わなかったけど、今となってみればすごく嬉しいことかも…

彼の秘書だからっていうだけのことだとはわかってるけど、自分だけ特別な感じがしてしまう…

密かにそう思っててもいいよね…






「ん?」


キョロキョロと部屋中を見ていたら、明らかに旭さんが自分で買ったとは思えない柄の箱が見えてこれまた山積みになっていた。


どこからどう見てもプレゼントだよねこれ…

誰からだろう…


見たところまだ未開封みたいだけど…
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