イジワル社長と偽恋契約
「社長…」

「……どうかしたか?」


パソコンに目を向けながら返事をする旭さんに、私は探るように言う。






「館林様という方からお電話らしいのですが…」

「…」


すると旭さんの手が止まる。

そしてまた嫌な顔をした後で、私の方をゆっくりと見つめた。





「今館林って言ったか?」

「はい…」


私が頷くと旭さんは深いため息をついて、椅子に深くもたれ掛かると面倒くさい顔をした。


どうしたんだろう…

やっぱり館林さんて方は取引先とは関係ない人なの?






「忙しいから取り次げないと伝えろ」

「…わ…わかりました」


ため息交じりの旭さんの言い方は、どこかイライラしているようにも見える。






「今後「館林」からの電話は一切こっちに繋げるな。そう言っておけ」

「はい…」


舌打ちでもしそうな雰囲気の中またパソコンに向かう旭さんを見ながら、

私は内線をまた取って言われた通りに話す。


館林という名前が頭に何度も響いて離れなくなった…

旭さんにとってこの館林という人は何者なんだろう…



彼のことをわかってきたつもりだけど、また分からなくなってきた。

この不安に押しつぶされそうな気持ちはなんだろう…


変な胸騒ぎがする。




翌日。

この胸騒ぎが当ってしまうとは思ってもいなかった……
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