イジワル社長と偽恋契約
旭さんの言っている事は正しい。


素人の私達は何も出来ないのに…私は慌ててばかり。

ここは落ち着かないといけないのに…


私はエレベーターの端に小さくくるまって、とにかく今はじっとすることにした。







「…」

「…」


30分後。

今だにエレベーターの扉は開かない。

旭さんと無言でいる空間が苦痛に感じ初めた私は、思い切って話しかけた。






「開きませんね…」

「そうだな…」

「…今何考えてます?」



今日は珍しく口数の少ない旭さん。

何か考え事してるのだろうか…





「いや…ただお前が俺の家に来る時にこのエレベーターに乗った時…故障しなくて良かったなと思ってさ」

「え…」

「お前が1人で閉じ込められてたら…俺はずっと気が気じゃなかったよ」


首元を触り言い方はやや軽めだったが…

旭さんの言葉は私の胸に響いた。



ここに来る時にエレベーターがなかなか来なかったのは、

その時から調子が悪かったのだろうか…


もしかしたらあの時に止まっていたかもしれないと思うと怖くなった。

旭さんと一緒にいてもこんなにパニックなのに1人だったと思うと…

考えるだけでゾッとする。






「そ、そうですよね…いやぁ、それにしても寒いですねっ」


恥ずかしくなって慌てて話を変えようと、私は適当な言葉を並べた。
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