イジワル社長と偽恋契約
今思ったけどエレベーターの中なのに結構寒い…

マフラーしてるけど手袋はしてないから手も冷たい。


どうせ車だと思って手袋してこなかったから失敗したな。

今日は結構冷えるって天気予報で言ってたし…






「どれ…」


いつの間にか旭さんは私の隣に来ていて、私の手を掴むと片手でギュッと握る。





「確かに冷たいな」


そして私の手を自分の口元に持っていくとハァ…と息を吐いた。

その行為に心臓が飛び出そうなくらいドキドキする私。



さっきはあんなにアタフタしちゃったけど…

これってもしかしたらチャンスなのかな。


旭さんとこんな密室に2人きりになれるなんてことは滅多にない…

何万分の一くらいの確率だよね。


私は一瞬で考えた。

今日はやっぱりいい日なのだ。


メイクをバッチリしていい事があるようにと願って良かった…





「さて…こんな狭い空間に2人きりな訳だし……何する?」


私を手を握りながら摩るように触る旭さんは、ちょっといたずらっ子みたいな顔をして私に聞いた。





「な、何って…何もすることないですよね」

「いや…こういう時は…」


私をじっと見つめる旭さんのブラウンの綺麗な瞳に釘ずけになり、金縛りにでもあったように目が離せなくなる。



ちょ、ちょっと…!

ここはエレベーターの中の密室で今は2人きりだけど…


さすがにそんなことは……










「仕事でもするか」

「へ?」


旭さんは仕事用のカバンからパソコンを出すと電源を入れて起動し、その間に分厚い書類を出して目を通し始めた。
< 73 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop