ダサい兄貴がいる友達と仲良くなる話
オレの昔話に付き合ってくれると言うので、ポツリポツリ聞いてもらった。
小夜は、何も話していないのか…
オレのこと、大切にしてくれてるんだ…
こんな引きこもりの変わり者、笑い者にして関係ない顔していればよかったのに。
ボタンが死んだこと。
受験のこと。
彼女のこと。
何も言わず、ただ頷いて聞いてくれた。
「美雨、ありがとう。
小夜の友達になってくれて。
オレが立ち直るきっかけになってくれて」
「きっかけ?」
抱きしめている腕に少し力を込めた。
「うん…
3年になるし、こんなんじゃダメだって思ってた。
でも、どーしていいのかわからなくて。
そんなとき、美雨が小夜のことでオレのことに来た。
小夜のことすごく心配してて。
図書館でのこともあったから、まさか話かけにくるなんて思いもよらなくて。
高校に入ってから、誰かに頼られるってことなくて、すごくうれしかったんだ。
この子にオレのことにもっと知ってほしい。
この子のことが知りたいって思った」
「あのときは、小夜ちゃんのことしか頭になくて」
そーだろうなぁ…
オレは美雨のことしか考えてなかったけど。
腫れ物に触るような扱いしかされてこなかったから、その普通がうれしかったってわからないだろうなぁ。
オレがすべてそうしてきたんだけど。
「持久走のあと、小夜とも話したよ。
お互い、誤解していたところもあって。
オレのしてきたことは、これからの人生をかけて小夜には償っていくつもりでいる。
小夜には幸せになってほしい」
本当にこれ以上望むことはないのかもしれない。
「あたしも…そー思っています」
「ありがとう。
これからも、よろしくね」
「はい!」
「長くなっちゃったね…
そろそろ、寝よう。
細かいところ省いたけど、また聞いてくれる?」
「はい…
あたしでよかったら…」
「美雨がいいんだ」
「は… い…」
スースー…
おやすみ…
髪に優しくキスすると、オレもすぐ深い眠りについた。