ダサい兄貴がいる友達と仲良くなる話




「あ…あの、風邪って、ひどいんですか?

連絡しても、全然返事がなくて…」


ヤベッ!

見惚れてた…



「今朝は37度って言ってたけど、あれはウソだね…」


「嘘って…?」


「親が休めないって言ってたから、気を使ったんだよ。

辛いなら、甘えればいいのにね…」


ふぁ〜と大きなアクビが出た。


小夜はいつもそーだ。

周りに気を使って、自分を押し殺す。




「え?!

じゃあ、小夜ちゃん、今家に一人なんですか?!」


「そーなんじゃない?

あの様子だと昼ごはんも食べてるかわかんないね…」



看病してやろうって言ったら、学校へ行くことが最高の看病だって言われちゃったからなぁ…

甘え下手なんだよなぁ…



「お兄さん!

あたし、お見舞いに行っていいですか?」


スッと立ち上がった美雨に見下ろされた。

お見舞いに行く?

本当に小夜の友達なのか?

学校一変わり者の妹だぞ?

行くって言うなら止めないけど…



「今から?

いいけど、場所わかる?」


美雨の動きが止まった。




「ち、地図を描いてもらえたら、きっといけます!」


なんて言いながら、どんどん暗い顔になっていってるぞ…


これは、もしかしたら…



「オレ、連れて行ってあげようか?」


帰れるかも?!



「いいんですか?!

あっっ?!」


突然、何かを思い出したように大声を出した。


「ダメです!

お兄さんは、授業をきちんと受けてください!」




「チッ! 美雨に話してたんだ…

帰れるチャンスだったのに…」


わぁ… 残念…

つい、美雨を睨んだ。


「ち、地図を描いてください。

一人で行けますから…」


地図ね…



「…

オレんち、駅から複雑なんだよね…

地図も描きづらいし、初めて来る人が辿り着けたことないんだよね…

それでも行ける?」


女って、だいたい地図読めないし、行ったことないとこに行くのを不安がる。

まだ、チャンスはある!





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