レインリリーで待ってる





ボートは、二人乗りで、アヒルボートみたいなものじゃなくて、漕ぐタイプのものだった。




それを加持くんと対になって、加持くんが漕ぐ。ゆっくり、ゆっくりと。




「はあ、気持ちええ空気やなー」




確かにその通りで、緑に囲まれたコースで、何だか空気がいつもよりも澄んで感じた。




「ほんとだねー」




すると、加持くんは急に漕ぐのをやめ「そろそろここらで飯食おうや」と言った。




私は、弁当を取り出し、紙コップにお茶を注いだ。




お茶の入った紙コップを右手で受け取ると、「うまそうやなー」と言って、左手でおにぎりを取った。




「うん、うまい!」




「ほんと? よかったー」




傍から見ると、カップルの会話みたいで、きっとデートってこんな感じなんだろうなと思う。





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