レインリリーで待ってる
弁当を平らげた加持くんは背伸びをしながら、「なあ、優衣」と聞いた。
「何?」
「お前、なんで『レインリリー』っちゅうか知っとるか?」
「『レインリリー』?」
「せや。うちの喫茶店の名前や」
そういえば、今まで考えたことがなかった。
レインはなんとなく雨のイメージで、リリーは女の人の名前か何かだと思っていた。
「あのな、あれは花の名前なんや。『レインリリー』」
「花の名前? どんな花?」
「梅雨明けの夏から秋ごろに白い花を咲かせる花で、別名タマスダレ」
「へえー、それで『レインリリー』かあー」
「んでな、花言葉が、『期待』。うちのじーちゃんが店を始める前に『お客さんぎょーさん来ますように』っちゅう期待を込めて、それが『レインリリー』なんや」
「そうだったんだねー。なんか、いい名前だね」