レインリリーで待ってる
新婚気分
「もしもし、姉貴? 今日、帰れないから。え? ああ、そうなんだ……」
公生くんは、受話器を置いて、「なんか、うちの両親も台風で帰れないんだって」と言った。
「なんか、大変だねー」
と言いつつ、本当は感謝している。ありがとう。台風。
でも、私にとっては恵みの天災だけど、この台風で困っている人は大勢いるわけだし、死んでしまう人もいるわけで、あんまり手放しで喜ぶのもどうなんだろう。
「まあ、許可出たし、とりあえずは、大丈夫だから」
「あ、うん……ごめんね?」
「いいよ、別に。俺が言い出したことだし。それより、コーヒー、おわかりいる?」
公生くんは、そう聞いて立ち上がると、さっきよりも馴れた手つきでお湯を沸かし始めた。
その間に私は、カーテンを閉めて、電気をつけた。