レインリリーで待ってる
翌日。
約束の時間に、私は明日菜と一緒に浴衣を着て、『レインリリー』へ向かった。
扉を開けると、カランコロンという音が鳴って、いつものようにおじさんが「いらっしゃい」と言う。
そして、二人でいつもの席に座って、おじさんの淹れてくれたコーヒーに砂糖とミルクを入れ、一口飲む。
優しい苦みが口に広がって、心が浄化されていくような、そんな気分になった。
「よお、御両人!」
バックヤードから加持くんが顔を出す。
そして、私たちの席に座って、煙草に火をつける。
「あ、あれ? か、加持、煙草吸うの!?」
明日菜が驚くのも無理はない。このことは、私と公生くん以外知らないのだから。
「まあ、黙っといてくれや」
「えー、優衣、どうする?」
「言っちゃう?」
「ちょ、ほんま勘弁やで!? せ、せや、コーヒータダにしたるから、な? な?」