レインリリーで待ってる
ちょうどその時、カランコロンと扉が開く音が鳴り、「ごめーん! 遅くなっちゃって……」と明日菜と公生くんが入店してきた。
「ええよ。おかげでユイボーといっぱいお話できたし。な? ユイボー」
呼び名が『ユイボー』に戻っていて、加持くんは、さっそく約束を守ってくれてるみたいだ。
「だから、『ユイボー』って呼ばないでって!」
無理矢理、明るく振る舞った。
「そ、そうよ! 加持。優衣が嫌がってるでしょ?」
「はははっ、えらいすんません!」
私は、チラッと公生くんの方を見た。
公生くんの右手には、真新しい文庫本があって、それに夢中でこのぎこちない茶番劇には、見向きもしていない。