お猫様が救世主だった件につきまして
子ども扱いはやめて!と抗議しようと振り向いた瞬間、心臓があり得ないほど跳ねた。
……アレクが……すごく優しい瞳であたしを見てたから。
「あ、あたしは淑女なんですからね! そういった子ども扱いはやめて」
「はいはい、わかりました。お嬢様」
「はいは、一回!」
「ハイヨ」
「また、あたしをバカにしてるでしょ~」
わざとぞんざいな態度を取ったけど、内心ではドキドキしながら焦りを感じてた。
なんでだろう? 急に……アレクが近くにいることが恥ずかしくて堪らなく感じてる。 彼との距離が近すぎて……息苦しい。
「さ、着くぞ。掴まれ」
急にアレクがあたしの身体を両腕で護るように囲むから、心臓が口から飛び出すかと思えた。どぎまぎしながら着いた先は、空から見えていた大きな湖の湖畔。
ディートは滑らかに滑空しながら無事に着地。大した衝撃もなく岸に降りることができた。
先にアレクが降りてあたしに手を伸ばすけど、あたしは突っ張って自力で降りようとした。
「へ、平気! 一人で降りれるから」
足を載せるトライアングルみたいな馬具に爪先をかけて、ゆっくり降りようとしたんだけど。手汗のせいかつるりと手のひらが滑った。
「きゃっ」
「おっと」
直ぐ様アレクがあたしを抱き留めてくれたから、事なきを得たけど。さっきよりもっととんでもない事態になってる。
「やっぱり危なかっしいな。素直に頼れよ」
「わ、悪かったわね! どうせ可愛げがない女ですよ!」
プイッ、とそっぽを向いてしまう。自分でも何でこんなに意固地になるかわからないけど、アレクと素直に接することができなくなってた。