お猫様が救世主だった件につきまして
アレクは腕を枕にして横たわると、あたしを見上げてきた。
「ちょっと、休めよ」
「え?」
何を言われたか、すぐには理解できなかった。
「ここに喚ばれてからずっと、おまえ頑張ってきただろ?」
「そんなこと……」
「あるだろ?」
突然、アレクは身体を起こすとあたしと向き合う。そして、目元を指先でなぞってきた。
「目、赤い。昨夜もほとんど寝ずに調べ物したんだろ?」
「……なんで」
なんで、知ってるの? その言葉は、言えなかった。アレクが指先をそっと唇に着けたから。
「内緒だな。ただ、無理をするな……俺たちのために、おまえには倒れて欲しくはない」
「…………」
さわさわ、と心地よい風がアレクのブロンドを揺らす。まばゆいばかりに輝いてるけど……あたしは、彼の不思議な瞳に囚われてた。
湖面より複雑で澄んだ色彩を……本当に綺麗だって思う。
「アレクだって……忙しいのに、わざわざ連れてきてくれたの?」
「さあな。単にサボりたかっただけかもしれないな……いてて!」
急にふざけた言い方になるから、ちょっとムカついて軽く彼の手をつねる。大げさに痛がり手のひらに息を吹き掛ける彼を見ながら、お腹の底から笑い声を上げた。