お猫様が救世主だった件につきまして
「あなたがサクラというひと?」
「はあ、そうですけどなにかご用ですか?」
いかにも自信ありげな美貌のブロンド美人のお嬢様が、あたしを見てふんと鼻を鳴らす。まあ、言いたいことは表情からわかりますけどね。
「たいしたことないわね、あなた。しかも故国では平民ですって? なぜ、そんな方がこんな場所で居座ってられるのかしら?」
「って言われましても。アレクの許可はもらってますから」
やっぱり言いがかりをつけにきたか、とあたしがため息を飲み込みながら言うと。水色の扇を広げ口元を隠したお嬢様は眉をひそめる。いいなあ、その美貌を1割でいいから分けてください。
「アレク王太子殿下に、何と馴れ馴れしい。やはり下々の人間は礼儀をわきまえぬものなのですね」
彼女は眉を寄せたまま、あたしにきっぱりと言いきった。
「あなた、アレク王太子殿下に二度と近づかないでくださらない?」
「は? なんであんたにそんな命令されなきゃいけないの?」
あたしはイライラし始めてた。たぶん貴族の令嬢であるお姫様方のわがままと傍若無人っぷりに。自分が世界の中心とか勘違いしてるんじゃないよって。
「決まってます。わたくしはアレク王太子殿下の妃の最有力候補ですのよ? あなたのような平民上がりの人間にうろつかれては、殿下のひいてはわたくしの品位まで疑われてしまいますの」